「それでね。唯夫さんなんだけど 49日を目途に散骨しようと思うの。本人の希望だったし。
杉本さんたちヨット仲間もみんなその願いは知ってるし」
「そのために葬儀の後で粉骨化もしたしね」
「散骨って海に撒くんだよね」
「そう、海洋散骨」
「海好きだったもんね」
「伊豆大島に山中さんってお友達がいるのよ。亡くなったことをお知らせして、その時、散骨の話をしたら船を出しますよって言ってくれたのよ」
「そっか」
「ともとりえも来てくれるでしょ」
「もちろん行くよ」
ゆりちゃんちから帰る途中でりえこがふと不安を漏らした。
「ねぇねぇ、ともねぇ、海洋散骨って素人がしてもいいの?」
「え、ダメなの?」
「いや、周りで聞いたことないから。業者さんでしたっていう人は社内にいる」
「たしかにねー、調べてみるよ」
で、調べたときに出てきたのが弊社のサイト、散骨想のこのページだった。
株式会社縁のサイトを読んで私は本当に安心した。
散骨のために伊豆大島に旅立つ日が近くなったとき
「ゆりちゃん、お花持って行っていい?」
「うーん、やめといたほうがいいわね、普通の漁港から船が出るでしょ近隣の方に人の死を悼む行事で船に乗るんだってわかったらご気分を害すじゃない。岸にお花が流れ着いても連想するかもしれないし」
「だよね。じゃあさ喪服もやめたほうがいいよね」
「もちろんよ・第一、船って揺れるわよ。波かぶるもしれないわよ」
「沖合に出るんだよね?」
「そうね近くじゃまずいでしょ」
という会話もあり、ゆりちゃんからも株式会社縁のサイトに書いてあるようなことを言われたので、私はますます安心した。
そして「ゆりちゃんも同じサイトで調べたに違いない」と思った。
後日談になるが、株式会社縁に入社することになった時、
私がゆりちゃんに「ゆりちゃんが散骨の時に検索して参考にしたHPの会社で働くことが決まったよ」
と言うとキョトンとしていた。ゆりちゃんは、縁のサイトをみていなかった。
というか、なんなら検索すらしていなかったのだ!
年の功というやつで、正しいマナーをなんとなくわかっていただけだったのだ!
恐るべし!ゆりちゃん!
いよいよ散骨!
さて、話を散骨当日に戻します。
いよいよ散骨です。
叔父を伊豆大島で見送った日は風の強い日だった。
私とゆりちゃんとりえこは有給も含めて土・日・月の2泊3日で伊豆大島に行く予定にしていた。
叔父のヨット仲間の杉本さんたちは土日の1泊2日で行く予定にしていた。
しかし出発前日の金曜日、雨が激しく降っていたため結局は日曜に出港に!
以下私の心の叫び・・・
「ゆりちゃんが混浴の露天風呂「浜の湯」に入りながら夕日が沈むのを見ましょうって言うから、
何年かぶりに水着も買ったんですけど!
私しか運転できないから私がレンタカーも予約したんですけど!」
(ちなみにりえこはこの時点ですでに水着は荷物から外したらしい)
結果として日曜日に出港できて、伊豆大島に到着した。
しかし前日まで船が出ないほどの大時化だった海はその日も波が高く風もあった。
船の持ち主の山中さんも「そんなに沖合まではいけないかも」と言いながら出船してくれた。
港の堤防を越えるといきなりの外海で船は大きく揺れた。
こわかった・・・。
叔父のヨット仲間とゆりちゃんは平然としているが、私とりえこは素人だ。
操船している山中さんは「今日は揺れますよ。岡林さんを見送る日じゃなかったら出しません」と言ってくれた。
しばらく行くとゆりちゃんが叫んだ
「もうここで。唯夫さんがこぼれちゃう」
みんな一斉にゆりちゃんの手元を見ると、水溶性の紙袋が破れて白い粉がサラサラとおちている。
「まずい」
ヨット仲間の杉本さんも慌てるし、操船している山中さんも慌てて「撒きましょう」というほど。
情緒もへったくれもあったもんじゃない。
「岡林さんさよなら、またな」
「おじちゃんまたね」
「唯夫さんまたね」
そして水溶性の袋ごと叔父は伊豆大島の海に沈んでいった。
数珠も持って行ったのでその場にとどまってしばらく手を合わせたかったが波が高くそれもままならない。
大慌てでの散骨となった。
※ 弊社にご依頼いただいた場合はこんな笑い話になるようなことにはなりませんのでご安心ください。
安全な航海・思い出に残る美しい散骨式となります。
そしてその後 翌日仕事のヨット仲間のみなさんは夕方の便で東京へ帰って行った。
みなさんを港で見送った後
「じゃ、お風呂行こうか」
「え?」
「え?」
「え?何?」
「水着持ってこなかったよ」
「大丈夫よ~湯浴衣をレンタルできるから」
「そ、そうなの?」
「私なんていつもそれよ」
しかし・・・地元の人たちで賑わう夕方の浜の湯で湯浴衣を着ている人など一人もいなかった。
あまりの珍しさに男の人のみならず女の人からもチラチラ見られるゆりちゃんとりえこ。
「へー、最近じゃみんな水着なのね~」
にこにこしながら沈む夕日を楽しんでいるゆりちゃんに対して
「恥ずかしくて死ぬ」
となかなか湯船から出ようとしないりえこ。
いや出ように出られなかったのだ。
なぜなら湯船から出ると生地の薄い湯浴衣がぴったり体に張り付いてとんでもなくセクシーになってしまったのだ。
「もうゆりちゃんの言葉に騙されない(泣)」
水着を荷物に入れたままにしてきた私は湯浴衣を着ずにすんだ。
「セーフ」と心の中で呟きながら、大注目のりえこが湯船から出て更衣室に戻る時なるべくピタっと後ろを歩いてあげた。
前は手で隠せても後ろは隠せないからね。
いろんな意味で思い出に残った伊豆大島への旅だった。
散骨の時のドタバタも、露天風呂のドタバタもきっと叔父は笑って見守ってくれてたに違いない。
後日談
余談ですが
叔父を見送って数か月後、家族で海洋散骨の話が出たときに、
「ほらほらここの会社のサイトにも書いてあるでしょ」と再び縁のサイトを開くと
「事務員さん募集します」との記事が出ていて
「おもしろそう!もし採用してもらえなくてもHPの知識が役立ちましたってお礼を言おう」と思って応募したら
思わず採用通知をいただいて今に至るわけです。
これもすべてご縁ですね。
手前味噌ですが弊社の散骨想のウェブサイトは、散骨についてとてもよくまとまっていると思います。